熟練の技が光る
生産者のこだわり
誠実に、ひとすじの細寒天に心を込めてものをつくるんだから、
良いものができるように努力するのは当たり前。
悩んで工夫して、ねらい通りのものができた時は、とにかく嬉しい。
使ってくださる方のためにも、期待に応えられるように頑張らなきゃ
と思っています。
ここから送り出すものが、どこかの和菓子店の高級羊羹のブランドや、
何より皆様の健康を担ったりするのですから、安心な、ちゃんとしたもの
を作り続けたい。
自然相手だから、考えて作業しなきゃ、いいものはできません。
何十年やっても、いつもチャレンジです。
原料の天草は、どこから?
近年は、外国産や天草とは異なる海藻から寒天を作るところも
増えてきましたが、こちらで販売する山岡細寒天の原料は、100%国産天草です。
最高級とされる伊豆産をはじめ、伊勢志摩、和歌山、高知、徳島、千葉など、
その年の出来具合によって各地のものを調合して利用します。
漁師の減少で年々天草の収量が減り、価格は高騰。
生産者としては苦しい状況ですが、豊かな海流が育む国産天草は
外国産よりはるかに良質なので、国産にこだわり続けています。
寒天作りの技とは、どのようなものですか?
原料の見極めや水分の含ませ方や抜き方、並べ方、凍らせ方などが
品質に影響するので、各ポイントで経験やコツが要求されます。
天筒で抜くにしても、切った寒天を筒に入れる人と抜く人の
あうんの呼吸が大切ですし、筒は重く、よしずの上に真っすぐに出すには
力と熟練の技が求められます。
また、夜、氷の塊を鎌で削ぎながら振りかける「凍てとり」も
コツが必要で、寒い上に手間がかかります。
寒天は細やかな手仕事で出来上がる繊細な食材です。
寒天の品質は、どのように判断するのですか?
山岡町には1955(昭和30年)に岐阜県が設置した寒天研究所があり、
二人三脚で歩んできました。
生産者は、日々、研究所で寒天の強度や融点などの品質をチェック。
そこで基準値を満たしたものだけが「山岡細寒天」の地域ブランドを
冠されて出荷される体制になっており、品質は科学的に裏付けられています。
生産者は、毎回、検査結果を見ながら、品質の保持と向上を図ることが
できるので、寒天を単独で研究する国内唯一の公共機関が町内にあるのは、
ありがたいことです。
寒天を冬に干すのはなぜですか?
夏と冬では日差しの強さや温度など条件が異なるため、同じ原料で
作っても品質に違いが出ます。
夏に干すと色が濃くなったり、板状に乾いてしまったりして強度も
弱くなりがちですが、冬にゆっくりと乾いた物は白くて弾力があり、
加工後に離水しにくいのです。
こうした違いは、食感やお菓子の出来を左右するので、用途で
使い分ければよいのですが、高級羊羹などには、やはり伝統的な冬季天日
干しのものが適しているようです。